未来クイズを深堀り!【Q.02598】「世界終末時計」編

文字数概算

約 3,800文字(見出し含む)

推定読了時間

約 8分

2026年、世界終末時計はどうなる? 90秒の「次」を読み解く思考実験

はじめに:2026年、終末時計の針はどこを指すのか?

 みなさん、こんにちは! もうすぐ2026年の1月下旬がやってきますね。この時期になると、ある「時計」のニュースが世界中を駆け巡るのをご存知ですか?

 そう、「世界終末時計(Doomsday Clock)」です。

 「人類滅亡まで、あと◯◯秒」。そんなショッキングな見出しと共に報じられるこの時計ですが、実は2025年、史上最短の「真夜中まで残り89秒」まで針が進みました。たったの1分半を切ってしまったのです。カップラーメンすら作れない短さです。

 「また今年も89秒なのかな?」
 「いや、世界中で戦争が起きているし、もっと進んじゃうかも……」
 「逆に、何か良いニュースがあって戻ることはないの?」

 そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

 この記事では、2026年1月20日頃に発表される最新の「終末時計」の時刻がどうなるのか、ただ結果を待つのではなく、私たち自身で予想してみるための「思考の材料」をお届けします。

 決して「怖い予言」をして不安を煽りたいわけじゃありません。むしろ逆です。
 この時計が「なぜ89秒まで進んでしまったのか」、そして「どうすれば針を戻せるのか」を知ることは、今の世界が抱える課題を整理し、私たちが向かうべき未来を考える最高のエクササイズになるんです。

 さあ、これから一緒に、2026年の世界の行方を読み解く思考実験の旅に出かけましょう! 準備はいいですか?


セクション1:基礎知識 - 「終末時計」とは何か?

 まずは基本のおさらいから始めましょう。「終末時計」という名前は有名ですが、その実態については意外と知られていないことも多いんです。

そもそも「終末時計」って何?

 世界終末時計(Doomsday Clock)は、アメリカの科学誌『Bulletin of the Atomic Scientists(原子力科学者会報)』が1947年に創設した、歴史ある指標です。

 その定義はズバリ、「人類が自滅的な危機(=真夜中)にどれだけ近づいているか」を象徴的に示すもの

 あくまで「象徴」であって、科学的な計測器で測った数値ではありません。でも、ただの感想文とも違います。この時計の針を動かしているのは、ノーベル賞受賞者を含む世界的な科学者や安全保障の専門家たちによる委員会(Science and Security Board)なんです。彼らが真剣に議論を重ね、「今の世界のリスクレベル」を時刻として表現しているんですね。

針が進んだり戻ったりする歴史

 1947年の創設時、時計の針は「7分前」からスタートしました。そこから現在まで、針は行ったり来たりを繰り返しています。

  • 一番遠かった(平和だった)時1991年
    冷戦が終わり、米ソが戦略兵器削減条約(START I)に調印した年です。この時、針はなんと「17分前」まで戻りました。今と比べると、ものすごい安心感ですよね。「世界はこれから平和になるんだ」という希望に満ちていた時代です。
  • 一番進んでいる(危険な)時2023年〜現在
    そして今です。ロシアによるウクライナ侵攻、気候危機の深刻化などを背景に、針は2023年に90秒となり、2025年にはついに「89秒前」を指しました。かつての「分」単位から「秒」単位になったこと自体が、事態の切迫度を物語っていますよね。

 ちなみに、アメコミの名作『ウォッチメン(Watchmen)』にもこの終末時計が重要なモチーフとして登場します。ポップカルチャーの中でも、「核戦争の恐怖」や「逃れられない破滅」のアイコンとして定着しているんですね。


セクション2:3つの脅威 - なぜ針は89秒まで進んだのか

 さて、ここからが本題です。なぜ今、時計は「残り89秒」という極限状態にあるのでしょうか?
 Bulletin of the Atomic Scientists(BAS)は、主に3つの巨大なリスクを理由に挙げています。これらを知ることで、2026年の予測が見えてきます。

1. 核リスク(最大のリスク)

 これが時計の針を最も強く押し進めている要因です。残念ながら、状況はあまり良くありません。

  • 戦争の長期化と拡散: ロシア・ウクライナ戦争は長期化し、核兵器使用の威嚇(いかく)も度々行われています。さらにガザ地区やレバノンを含む中東情勢の悪化も、核保有国やその同盟国を巻き込むリスクを孕んでいます。
  • 軍備管理の崩壊: かつて米ロ間にあった「対話のチャンネル」や「核軍縮条約」が、次々と機能不全に陥っています。お互いに相手の手の内が見えない状態は、誤解や誤算による偶発的な核使用のリスクを高めてしまいます。
  • 数の現実: ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)やアメリカ科学者連盟(FAS)のデータによると、世界の核弾頭数は依然として膨大です。特に、実戦配備されている核兵器の数は減少どころか、近代化によってその破壊力や精度が増しているのが現状です。

2. 気候変動(迫りくるタイムリミット)

 核と並んで重視されているのが、気候変動です。私たちも肌で感じていますよね?

  • 止まらない気温上昇: 世界気象機関(WMO)やCopernicus(C3S)のデータによると、2023年、2024年と立て続けに「観測史上最も暑い年」を記録しました。熱波、洪水、干ばつといった極端な気象現象は、もはや「異常」ではなく「日常」になりつつあります。
  • 対策は進んでいるけれど…: もちろん、良いニュースもあります。国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、太陽光発電などの再生可能エネルギーへの投資額は急増しており、化石燃料への投資を上回る勢いです。しかし、BASの評価基準はシビアです。「努力しているか」ではなく、「実際に温室効果ガスの排出量が減り始めたか(ピークアウトしたか)」を見ているからです。残念ながら、世界全体の排出量はまだ明確な減少トレンドに入っていません。

3. 破壊的技術(予測不能な新興リスク)

 そして近年、急速に存在感を増しているのがAI(人工知能)バイオテクノロジーなどの「破壊的技術」です。

  • 生成AIの光と影: AIは便利ですが、同時に「大規模な偽情報(ディープフェイク)」を瞬時に拡散させる力も持っています。選挙の結果を歪めたり、戦時にニセの情報を流してパニックを起こしたりするリスクは、民主主義と安全保障への直接的な脅威です。
  • 軍事利用の加速: 自律型致死兵器システム(LAWS)、いわゆる「AI兵器」の開発競争も懸念材料です。人間の判断を介さずに攻撃を行う兵器が普及すれば、紛争のエスカレーション速度は人間の制御を超えてしまうかもしれません。

 「核」「気候」「AI」。この3つのリスクが複雑に絡み合い、押し出されたのが「89秒」という時刻の正体なんですね。


セクション3:思考実験 - 2026年のシナリオ予測

 材料は揃いました。では、これらを踏まえて2026年1月の発表で時計はどう動くのでしょうか?
3つのシナリオで思考実験してみましょう。あなたなら、どのシナリオが一番ありそうだと思いますか?

シナリオA:現状維持(やっぱり89秒のまま)

 正直に言います。これが最も可能性が高い「本命」シナリオです。

  • 理由: ロシア・ウクライナ戦争も、気候変動も、AIの規制も、この1年で「劇的に解決した」わけではありません。かといって、「世界規模の核戦争が始まった」わけでもありません。「極めて危険な状態が、ダラダラと続いている(高止まり)」のが今の世界のリアルです。
  • BASの心理: 89秒というのは、すでに限界に近い数字です。ここからさらに針を進めるには、「核使用の瀬戸際」のような相当ショッキングな事態が必要です。逆に、少し良いことがあったくらいで針を戻してしまい、「もう安心だ」と誤解されるのも避けたいはず。だからこそ、「警鐘を鳴らし続けるために、あえて89秒で固定する」という判断が働きやすいのです。

シナリオB:進行(悪化してさらに短くなる)

 考えたくはありませんが、これも十分にあり得る「悲観」シナリオです。

  • トリガー(引き金): 例えば、ウクライナや中東で戦術核使用の懸念が具体的に高まった場合。あるいは、AIを使った大規模なサイバー攻撃や偽情報キャンペーンが、国家間の決定的な対立を引き起こした場合です。
  • どうなる?: もし針が進むとしたら、もう「秒」を削る余地はあまりありません。「残り60秒(1分)」のような、最後の警告とも言える数字が突きつけられるかもしれません。

シナリオC:後退(改善して針が戻る)

 これこそ私たちが望む「楽観」シナリオです。ハードルは高いですが、不可能ではありません。

  • 条件: 針を戻すには、「言葉ではなく行動」が必要です。
    • : 米中や米ロの間で軍備管理の実務者協議が再開される、ホットライン(緊急連絡網)が強化されるなど、信頼醸成の具体的なアクションが見えた時。
    • 気候: COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)で、各国がこれまでの約束を上回る削減目標を提示し、データ上でも排出減少の兆しが見えた時。
    • AI: 国際的なAI規制の枠組みが合意され、野放図な開発にブレーキがかかった時。
  • 期待: もしこれらが少しでも動き出せば、BASは「希望の兆し」を評価して、89秒から「100秒」や「2分」へと針を戻すかもしれません。

批判的視点:終末時計の限界と向き合い方

 ここまで真剣に予想してきましたが、一つだけクールダウンしておきましょう。
 終末時計はあくまで一つの「見方」であって、絶対的な真実ではありません。

 批判的な意見としてよく言われるのが、「曖昧すぎる」という点です。「核のリスクと気候のリスクを混ぜて、一つの時間にすることなんてできるの?」という指摘はもっともです。また、選定委員の政治的なスタンスによって針が動くのではないか、という疑念の声もあります。

 さらに、「怖がらせるだけで、逆効果じゃないか?」という議論もあります。「もう何をやっても手遅れだ(Doomerism)」という無力感を与えてしまったら、元も子もありませんよね。

 大切なのは、時計の針そのものに一喜一憂することではなく、それ(針)が指し示している現実のデータ(CO2濃度や核弾頭数)の方を直接見ることです。時計はあくまで、私たちがその現実を見るきっかけを与えてくれる「目覚まし時計」に過ぎないのです。


実行手順:私たちができる「針を戻す」ためのアクション

 最後に、「じゃあ、私たち一般市民には何ができるの?」という話をしましょう。
 「核兵器を減らすなんて、私には無理だよ」と思うかもしれません。でも、無力ではありません。時計の針を動かしているのは、最終的には世論と私たちの選択だからです。

 明日からできることを4つ挙げてみました。

  1. 一次情報を見るクセをつける:
    「人類滅亡!」という煽り見出しのネットニュースに踊らされないでください。Bulletin of the Atomic Scientistsの公式サイト(英語ですが翻訳ツールを使えば読めます)に行って、彼らが「なぜその時刻にしたのか」という声明文を読んでみてください。意外と冷静で論理的な文章に驚くはずです。
  2. 対話する:
    「なんか怖いね」で思考停止せず、この話題を食卓や友人との会話に出してみてください。「気候変動、最近どう思う?」「AIって便利だけど怖い部分もあるよね」と話すこと。それが関心を広げる第一歩です。
  3. 選択する(投票と消費):
    脱炭素に熱心な企業の商品を選んだり、平和外交や環境政策を重視する政治家に投票したりすること。これらは確実に、時計の針を「戻す」力になります。
  4. 技術を知る:
    AIをただ怖がるのではなく、正しく理解して使うこと。フェイクニュースを見抜くリテラシーを身につけること。これも立派な防衛策です。

結論:未来はまだ決まっていない

 2026年1月、世界終末時計が何秒を指すのか。それは誰にもわかりません。
 この時計が教えてくれる一番大切なこと。それは、「まだ真夜中(0秒)にはなっていない」という事実です。

 残り時間が89秒だろうと、100秒だろうと、時間は残されています。
 未来はあらかじめ決まっている運命ではなく、私たちのこれからの行動の積み重ねで作られるものです。

 来たる発表の日。ニュースで「残り◯◯秒」という声が聞こえたら、ぜひこの記事を思い出してみてください。そして、「なるほど、専門家はそう判断したか。じゃあ、私はどう思うかな?」と、自分自身の頭で未来を考えてみてください。

 その瞬間、あなたはもう恐怖に怯えるだけの傍観者ではありません。未来を変える当事者の一人になっているはずですから。


参照URL一覧


Xでフォローしよう

おすすめの記事