
やっほー!未来ヨムです。
いよいよ夏の終わりの楽しみ、リド島の11日間がやってきますね。「未来の出来事」を追いかけてきた予言テスト作家の私が、2026年9月12日の一瞬を、皆さんと一緒に先読みしちゃいます。
今回は最初に、ひとつだけ確定していることをお伝えします。今年コンペティション部門に選ばれた20本の監督のなかに、金獅子賞を受賞したことがある人は、ひとりもいません。 歴代の受賞監督リストと今年の20人を突き合わせても、名前がひとつも重なりませんでした。つまり9月12日には、確実に「はじめて金獅子を手にする監督」が誕生するのです。
そして日本からは、是枝裕和監督『ルックバック』と塚本晋也監督『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』の2本が選ばれました。同じ年のコンペ部門に日本人監督の作品が複数並ぶのは、北野武監督『アキレスと亀』・宮崎駿監督『崖の上のポニョ』・押井守監督『スカイ・クロラ』の3本が揃った2008年以来、18年ぶりです。
私たちが挑戦するのは、単なるクイズじゃありません。まだ世界中の誰も答えを知らない、ワクワクが詰まった「未来クイズ」です。審査員のみなさんだって、まだ全作品を観終えていないのですから!
リド島の11日間と、有翼のライオン
ヴェネツィア国際映画祭が始まったのは1932年。カンヌ、ベルリンと並ぶ「世界三大映画祭」のひとつで、そのなかでもいちばん歴史が長い映画祭です。
会場は、ヴェネツィア本島ではなく、細長い砂州でできたリド島。ゴンドラの水路とは打って変わって、海水浴場とホテルが並ぶリゾート地です。俳優も監督も記者も、みんな船に乗って会場入りするというのが、この映画祭のちょっと素敵なところ。
最高賞の名前は金獅子賞(Leone d'Oro)。ヴェネツィアの守護聖人・聖マルコの象徴である「有翼のライオン」からとられています。監督賞と審査員大賞にあたる銀獅子賞、俳優に贈られるヴォルピ杯なども、この11日間で決まります。
日本と金獅子賞の、29年
日本映画が金獅子賞を受賞したのは、これまでに3回。1951年の黒澤明監督『羅生門』、1958年の稲垣浩監督『無法松の一生』、そして1997年の北野武監督『HANA-BI』です。
つまり29年ぶりの4本目がかかっている、ということになります。
「じゃあ日本映画はずっと届いていないの?」というと、そんなことはありません。2020年には黒沢清監督『スパイの妻』が銀獅子賞(監督賞)、2023年には濱口竜介監督『悪は存在しない』が銀獅子賞(審査員大賞)を受賞していて、最高賞のすぐ隣まで来ているんです。あと一段。
今年の2本を送り出す監督も、リド島には何度も足を運んでいます。是枝監督は1995年『幻の光』、2017年『三度目の殺人』、2019年『真実』に続くコンペ4度目。塚本監督も2009年『鉄男 THE BULLET MAN』、2014年『野火』、2018年『斬、』に続くコンペ4度目です。1995年の『幻の光』は金オゼッラ賞(撮影賞)に輝いていますが、これは撮影監督の中堀正夫さんに贈られた賞。監督個人としての受賞は、おふたりともまだありません。
過去の記録が教えてくれる、3つのこと
予想の材料として、記録から確かめられたことを3つ並べておきますね。
① 今年の20監督に、金獅子受賞経験者はゼロ。 冒頭でお伝えしたとおりです。ちなみに1949年に創設された金獅子賞を二度受賞した監督は、アンドレ・カイヤット、ルイ・マル、チャン・イーモウ、アン・リーの4人だけ。常連が繰り返し獲る賞ではない、ということですね。
② オープニング作品は、直近13大会で一度も金獅子を獲っていない。 2013年『ゼロ・グラビティ』から2025年『La grazia』まで、13大会ぶんのオープニング作品と受賞作を1本ずつ照らし合わせましたが、すべて別の作品でした。コンペ部門に入っていた年(2016年『ラ・ラ・ランド』、2019年『真実』など)でも届いていません。今年のオープニングはダニー・ボイル監督『Ink』です。
③ イタリア映画の金獅子は、2013年『Sacro GRA』が最後。 開催国だからといって有利になるわけではないようで、以降の12大会はすべて他国の作品に渡っています。今年、イタリアが筆頭製作国の作品は5本あります。
「誰が出るか」と同じくらい、「誰が選ぶか」
ここまで作品の話をしてきましたが、金獅子賞を決めるのは審査員7人です。誰が座っているかを知ると、予想の解像度がぐっと上がりますよ。
審査委員長はマギー・ギレンホール。俳優として知られていますが、監督デビュー作『ロスト・ドーター』(2021年)をこのヴェネツィアのコンペ部門に出品し、脚本賞を受賞している当事者です。つまり「リド島で評価される作品とは何か」を、賞をもらう側として経験している人が委員長を務めます。
さらに審査員には、カウテール・ベン・ハニア監督(チュニジア)が入っています。昨年のヴェネツィアで『The Voice of Hind Rajab』が23分間のスタンディングオベーションを受け、銀獅子賞(審査員大賞)を受賞したまさにその人。ダニエル・ブラムバーグ(イギリス)は作曲家。2024年にヴェネツィアで銀獅子賞(監督賞)を得た『ブルータリスト』の音楽でアカデミー作曲賞を受賞し、翌2025年も審査員特別賞を受けたジャンフランコ・ロージ監督『Pompei: Below the Clouds』の音楽を担当しています。2年続けてリド島の受賞作に名前が刻まれた人です。
残る4人は、香港の名匠ジョニー・トー監督、フランスのグザヴィエ・ジャノリ監督、アフガニスタンのシャールバーヌー・サダート監督、そしてイタリア出身で、アメリカのイェール大学で教える映画研究者フランチェスコ・カセッティ。作り手6人+研究者1人という構成です。
つまり7人のうち2人が、直近5年のリド島で自ら賞を受け取っています。もう1人は、2年続けて受賞作の音楽を手がけた作曲家。「リド島の記憶が新しい審査員団」が、どんな一本を選ぶのか。ここも予想の材料にしてみてください。
答えが確定するのは、9月12日の夜
正解が決まるのは、現地時間9月12日(土)の授賞式。日本時間だと13日(日)の未明ですね。判定は、ヴェネツィア・ビエンナーレ公式サイトが発表する公式賞リストの「金獅子賞」の欄で行います。
ここで、公式規約からひとつ、答え合わせが100倍楽しくなる豆知識を。
規約には「1本の作品が複数の賞を受け取ることはできない」「同点受賞(引き分け)は行わない」と、はっきり書かれています。例外は俳優賞(ヴォルピ杯とマストロヤンニ賞)だけ、しかもその例外を使えるのは1回限り。金獅子受賞作の俳優に贈る場合は、審査員全員一致が条件です。ということは——授賞式で金獅子賞より先に発表される銀獅子賞や脚本賞に呼ばれた作品は、その瞬間に金獅子の可能性が消えるということ。発表が進むにつれて、候補が目の前で減っていくんです。生中継や速報を追いながら、自分の選んだ作品が残っているかドキドキする。これぞ未来クイズの醍醐味だと思いませんか?
もうひとつ、今年ならではの偶然があります。日本勢2本は、どちらも9月11日(金)に日本公開。授賞式の前日です。もし受賞となれば、公開したての劇場が一気に沸くことになりますね。
なお日本からは、コンペ部門以外にもう2本。三池崇史監督のドキュメンタリー『襲名』(十三代目市川團十郎白猿の襲名披露を3年以上追った作品)と、SABU監督の『Arrested Memory』(台湾・日本の合作で、堤真一さんと霧島れいかさんが出演)が、どちらもアウト・オブ・コンペティション部門に選ばれています。どちらも金獅子賞の対象ではありませんが、コンペとアウト・オブ・コンペを合わせると、日本人監督の作品は4本。にぎやかな年になりました。
全選択肢を徹底解説!あなたの直感はどれ?
20作品から7つに絞るにあたって、選び方を先にお伝えします。基準は3つだけ。A:監督の作品が過去にヴェネツィアのコンペ部門で公式賞を受賞している/B:日本から選ばれた作品/C:オープニング作品。 この3つに当てはめたら、ちょうど7作品になりました。私の好みは入っていません。
②『ルックバック』(是枝裕和監督)藤本タツキさんの同名漫画を、是枝監督が実写映画化した99分の一作。藤野役に出口夏希さん、京本役に蒔田彩珠さんを迎えたW主演で、菅田将暉さん、宮藤官九郎さんらも出演します。日本公開は9月11日。是枝監督は1995年『幻の光』が金オゼッラ賞(撮影賞)を受けており、リド島との縁は30年以上になります。
③『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』(塚本晋也監督)ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンさんのノンフィクションをもとに、加害の側から戦争を見つめる116分。ネルソン役にロドニー・ヒックス、精神科医役にジェフリー・ラッシュ、そして『野火』以来の塚本組としてリリー・フランキーさんが参加しています。塚本監督は1998年『バレット・バレエ』のワールドプレミアからリド島に通いつめていて、コンペ部門はこれで4度目。ほかにオリゾンティ部門などでも作品が上映されてきた、リド島がいちばんよく知っている日本人監督のひとりです。
⑤『Possible Love(可能な愛)』(イ・チャンドン監督)『バーニング 劇場版』から8年、待ちに待った新作は164分の大作です。イ・チャンドン監督は2002年『オアシス』でこの映画祭の銀獅子賞(監督賞)を受賞していて、金獅子はまだ。Netflix作品ですが、ヴェネツィアは2018年に配信作品『ROMA/ローマ』へ金獅子を贈った実績があるので、そこは不利になりません。
⑦『The Echo Chamber』(アンドレア・パラオロ監督)2018年に亡くなったベルナルド・ベルトルッチ監督が遺した脚本の映画化です。アリシア・ヴィキャンデル、ルカ・マリネッリ、スーザン・サランドンが出演。パラオロ監督は長編4作すべてをヴェネツィアでプレミアしていて、コンペ部門は3回目。2017年『Hannah』ではシャーロット・ランプリングにヴォルピ杯(女優賞)をもたらしており、審査員との相性は実証済みといえます。
残る3作もひとことずつ。①『Ink』(ダニー・ボイル監督)は、ルパート・マードックによる英大衆紙『ザ・サン』買収を描くオープニング作品。④『Wild Horse Nine』(マーティン・マクドナー監督)は、1973年のチリ軍事クーデター直前のイースター島を舞台にしたブラックコメディで、ジョン・マルコヴィッチとサム・ロックウェルが共演します。⑥『Succederà questa notte』(ナンニ・モレッティ監督)は、1981年『Sogni d'oro』で審査員特別賞を受けて以来、45年ぶりのコンペ復帰作。2024年と2025年に心筋梗塞で倒れたモレッティ監督が、そこから撮り上げた一本でもあります。
そして⑧その他。ここは決して空箱ではありません。2025年に栄誉金獅子賞を受けたばかりのヴェルナー・ヘルツォーク監督『Bucking Fastard』(ルーニー・マーラとケイト・マーラの実姉妹が共演)、ペネロペ・クルスとハビエル・バルデム夫妻が並ぶフロリアン・ゼレール監督『Bunker』、ロバート・パティンソン主演の『Primetime』、ケイシー・アフレック監督『Company』、コンペ4本目のステファヌ・ブリゼ監督『Un bon petit soldat』、イリヤ・フルジャノフスキー監督『DAU』、エドアルド・デ・アンジェリス監督『Il fuoco che ti porti dentro』、マルコ・ベキス監督『Ritorno a Buenos Aires』、パオロ・ストリッポリ監督『L'estranea』、セドリック・カーン監督『15/18』、ニコラ・パリゼール監督『Un peu avant minuit』、アリ・アスガリ監督『A Bit of Light』、メイ・エル=トーキー監督『Kvinde, ukendt』——この13本が、まるごと⑧に入っています。むしろ、いちばん分厚い選択肢かもしれませんね。
しかも⑧には、もうひとつ含みがあります。公式規約はコンペ部門の枠を「最大21本」と定めていて、今年発表されたのは20本。つまり開幕までにもう1本追加される余地が残っているんです。もし21本目が現れて、その作品が金獅子を獲った場合も⑧が正解になります。
ちなみに栄誉金獅子賞については、2019年にキャリア賞を受けたペドロ・アルモドバル監督が2024年に競争部門の金獅子を獲った前例があります。「キャリア賞をもらったら終わり」ではないんです。
まとめ
整理しますね。今年は必ず新しい金獅子監督が生まれる年で、日本にとっては29年ぶりの4本目がかかった年。記録の上では、オープニング作品と開催国イタリアが、それぞれ13大会・12大会にわたって最高賞から遠ざかっています。そして選ぶのは、自分もこの映画祭で賞を受け取った経験を持つ人を2人ふくむ、7人の審査員。この数字を信じるか、今年こそ記録が破られると読むか——そこがこの予言テストの分かれ道です。
あなたは、どの作品が9月12日のリド島で有翼のライオンを掲げると思いますか?どの選択肢を選んでも、授賞式の夜のドキドキは、あなただけの特別な体験になります。未来を予測して、明るい気持ちでその瞬間を待ちましょう!
判定方法
現地時間2026年9月12日(土)の授賞式で発表され、ヴェネツィア・ビエンナーレ公式サイト(labiennale.org)に掲載される Venezia 83 公式賞リストの「GOLDEN LION for Best Film(金獅子賞)」の欄に記載された作品名で判定します。公式規約により同点受賞(ex aequo)は行われないため、正解は必ず1作品に確定します。①〜⑦以外の作品(開幕までに追加選出された作品を含む)が受賞した場合、および授賞式が中止・延期となり9月12日中に金獅子賞が発表されなかった場合は⑧とします。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございましたー!
※本記事の記述はすべて2026年8月13日時点で確認できた情報にもとづいています。
※本記事に登場する人名は、映画祭公式・製作/配給各社・報道が公表している監督および俳優に限っています。
本文 5,952文字(実測)/推定読了時間 約12分

