
やっほー!未来ヨムです。
実は去年の秋、私はこの同じ棋戦で予言テストを出しています。「第73期王座戦、藤井聡太王座vs伊藤匠叡王の対戦結果は?」——答えは3勝2敗で伊藤匠叡王の獲得でした。最終第5局までもつれた末に、王座の座が入れ替わったのです。
そして1年後。あのとき挑戦者だった伊藤匠さんが、今度は守る側としてまったく同じ舞台に立ちます。 相手は8月5日の挑戦者決定戦で藤井聡太竜王・名人を117手で破った、広瀬章人九段。39歳、王座への挑戦はこれが初めてです。
守る23歳と、挑む39歳。この五番勝負がどう決着するのか、9月2日の時点では誰も知りません。対局する2人だって知らないのです。これぞ未来クイズ! 一緒に予知っていきましょう。
そもそも「王座戦」って、どんな棋戦?
王座戦は、日本経済新聞社と日本将棋連盟が主催する、将棋の八大タイトル戦のひとつです。一次予選・二次予選・挑戦者決定トーナメントを勝ち抜いた1人だけが、現王座に五番勝負で挑めます。
面白いのが、この棋戦の「体質」です。
まず1日制で、持ち時間は各5時間。竜王戦や名人戦、王位戦のような2日制ではありません。朝9時に始まって、その日のうちに終わります。そして八大タイトル戦の番勝負のうち、夕食休憩があるのは名人戦の2日目と、この王座戦だけ。夕方17時から30分の休憩をはさんで、そこから終盤戦に突入していくわけですね。
もうひとつ、王座戦だけの特徴があります。永世称号の名前です。ほかの棋戦は「永世名人」「永世竜王」のように「永世」を冠しますが、王座戦だけは「名誉王座」。連続5期または通算10期で資格を得られます。八大タイトルで「永世」を使わないのは、王座戦ただひとつなんですよ。
なお王座戦の歴史は1953年度から始まっていますが、タイトル戦に格上げされたのは1983年度の第31期から。しかも第31期だけは五番勝負ではなく三番勝負でした。この記事で「過去のスコア」を数えるときは、五番勝負になった第32期以降を対象にしますね。
今年の日程はこちらです。
| 局 | 日程 | 対局場 | 立会 |
|---|---|---|---|
| 第1局 | 9月2日(水) | 元湯陣屋(神奈川県秦野市) | 深浦康市九段 |
| 第2局 | 9月15日(火) | 名古屋マリオットアソシアホテル(愛知県名古屋市) | — |
| 第3局 | 10月2日(金) | ニセコ温泉郷 いこいの湯宿 いろは(北海道虻田郡ニセコ町) | 屋敷伸之九段 |
| 第4局※ | 10月14日(水) | ホテルオークラ神戸(兵庫県神戸市) | 谷川浩司十七世名人 |
| 第5局※ | 10月27日(火) | 常磐ホテル(山梨県甲府市) | — |
※印は指定局。決着がついてしまえば指されません。第1局と第5局の先後は振り駒、第2〜4局は交互に入れ替わります。
ちなみに第1局の立会を務めるのは深浦康市九段。2010年、広瀬九段が初タイトルの王位を奪った、まさにその相手です。16年後、同じ人が盤のそばに座って開幕局を見届けることになりました。
記録が教えてくれる、4つのこと
さあ、ここからが予想の材料です。第32期から前期・第73期まで、王座戦の五番勝負は42回行われました。この42シリーズを1つずつ数え直して、確かめられたことを4つ並べますね。
① スコアは「3-0」がいちばん多い。
42回の内訳は、3勝0敗が18回、3勝1敗が11回、3勝2敗が13回。ストレート決着が4割強を占めます。
② 防衛は30回、奪取は12回。でも……。
王座を守り切ったのが30回、挑戦者が奪ったのが12回。防衛率にすると約71%です。ここだけ見ると「王座は簡単には動かない」と読みたくなりますよね。
ところが、この30回の防衛のうち、なんと22回が羽生善治九段ひとりのものなんです。羽生さんは第40期から第58期まで19連覇という、ちょっと現実感のない記録を持っています。そこで羽生さんの防衛22回を外して残り20シリーズを数え直すと——防衛8回、奪取12回。比率がひっくり返ります。「王座は動きにくい」のではなく、「羽生善治が動かさなかった」というのが実態に近いのですね。
③ 王座が入れ替わった12回は、3-0・3-1・3-2がちょうど4回ずつ。
これは私も数えていて驚きました。挑戦者が奪取に成功した12シリーズのスコアは、3-0が4回、3-1が4回、3-2が4回。きれいに三等分です。「挑戦者が勝つときはギリギリの接戦になるはず」という直感は、王座戦の記録では裏付けられません。むしろ、奪うときは一方的に奪われている例も同じだけあるということです。
④ 新しい王座の「初防衛戦」は、6勝6敗のちょうど五分。
タイトル戦になった第31期以降で、王座を奪って翌期に初防衛戦を迎えたのは延べ12回。守り切ったのが6回(中原誠さん2回・羽生善治さん2回・永瀬拓矢さん・藤井聡太さん)、跳ね返されたのが6回(塚田泰明さん・谷川浩司さん・福崎文吾さん・渡辺明さん・中村太地さん・斎藤慎太郎さん)。きっかり半々なんです。
伊藤匠王座は、この13例目にあたります。
おまけをもうひとつ。第1局を制した側がそのままシリーズを制したのは、42回中30回(約71%)でした。裏を返せば、開幕局を落としてから逆転したケースが12回あるということ。そして去年の第73期は、第1局を取った藤井聡太王座が失冠した、まさにその12回目でした。9月2日の陣屋は、かなり重い一局になりそうです。
守る23歳と、挑む39歳
伊藤匠王座は2002年10月10日生まれの23歳。東京都世田谷区の出身で、宮田利男八段門下です。2020年10月に17歳で四段になったときは、当時の最年少棋士でした。
名前が全国に響いたのは2024年6月20日。第9期叡王戦で藤井聡太叡王を3勝2敗で破り、八冠独占を崩したあの日です。以来、叡王を3期連続で保持し、去年の秋には王座も加えて二冠になりました。2025年10月28日には九段に昇段しています。
ここで、予想に直結する事実をひとつ。伊藤王座は、決着済みの直近4回の番勝負を、すべて3勝2敗で制しています。
- 第9期叡王戦(2024年):藤井聡太叡王に3勝2敗で奪取
- 第10期叡王戦(2025年):斎藤慎太郎八段を3勝2敗で退けて初防衛
- 第73期王座戦(2025年):藤井聡太王座に3勝2敗で奪取
- 第11期叡王戦(2026年):再び斎藤慎太郎八段を3勝2敗で防衛
4回連続、すべて最終第5局までもつれてからの勝利。ストレートで勝ったことも、ストレートで負けたこともありません。
対する広瀬章人九段は1987年1月18日生まれの39歳。北海道札幌市の出身で、勝浦修九段門下です。かつては四間飛車穴熊を武器に「振り穴王子」と呼ばれましたが、将棋AIの台頭を経て、いまは矢倉や角換わりといった相居飛車を主戦場にしています。
タイトル獲得は2期。2010年に深浦康市王位から王位を奪い(早稲田大学に在学したままの獲得で、大学生のタイトル獲得は史上初でした)、2018年には羽生善治竜王から竜王を奪取しています。この2つ、どちらも決着まで長引いているのが特徴で、王位戦は4勝2敗のうえに千日手が2局、竜王戦は4勝3敗のフルセットでした。
そしてもうひとつ。広瀬九段のタイトル戦登場8回のうち、五番勝負はたった1回です(2019年の第44期棋王戦、渡辺明棋王に1勝3敗)。竜王戦3回・王位戦3回・王将戦1回はすべて七番勝負。5局で決まる番勝負は、広瀬九段にとって7年ぶり2度目ということになります。
ここで、ちょっと鳥肌が立つ偶然を2つ。
広瀬九段が初タイトルの王位を獲得したのは、2010年9月2日。今年の王座戦第1局と、まったく同じ日付です。そして翌2011年、その王位を羽生善治二冠に奪い返された最終第7局の舞台が——神奈川県秦野市の陣屋。今年の第1局の会場、そのものなんです。約15年前に自分がタイトルを手放した場所で、広瀬九段は開幕局を迎えます。
ふたりの直接対決は、通算9局で伊藤王座の5勝4敗(2026年8月14日時点)。ほぼ互角です。直近では2025年9月11日の順位戦B級1組で広瀬九段が勝っています。
答えが確定するのは、10月2日から27日のあいだ
正解が決まるのは、どちらかが3勝目を挙げた瞬間です。最短なら10月2日(金)の第3局、最長なら10月27日(火)の第5局まで、答え合わせを待つことになります。
そして今年、伊藤匠王座にはもうひとつの戦いが並行しています。第67期王位戦七番勝負です。伊藤王座は藤井聡太王位への挑戦者でもあり、2026年8月14日時点のスコアは藤井王位の2勝1敗。伊藤王座は追いかける側です。
9月の日程を並べてみると、その過密ぶりがよく見えます。
- 8月18〜19日:王位戦第4局(長崎・ガーデンテラス長崎)
- 8月26〜27日:王位戦第5局(徳島)
- 9月2日:王座戦第1局(秦野・陣屋)
- 9月8〜9日:王位戦第6局(秦野・陣屋)
- 9月15日:王座戦第2局(名古屋)
- 9月28〜29日:王位戦第7局(甲府・常磐ホテル)
- 10月2日:王座戦第3局(ニセコ)
お気づきでしょうか。王位戦第6局の会場は、王座戦第1局と同じ元湯・陣屋。 そして王位戦第7局の会場は、王座戦第5局と同じ常磐ホテル。伊藤王座は、9月のうちに同じ宿へ2度通うことになるかもしれません(王位戦が第6局・第7局まで進めば、の話ですけれど)。
2日制の七番勝負と1日制の五番勝負を同時に走らせる9月。この負荷をどう見るかも、予想の材料になりそうです。
選択肢を徹底解説!あなたの予言はどれ?
まず、この問題の選択肢が「7つしかない」理由からお話しさせてください。
五番勝負は、先に3勝した側が勝者です。だからスコアは3-0・3-1・3-2の3通りしかなく、それが伊藤王座・広瀬九段の2人ぶんで合計6通り。私が候補を選んだのではなく、ルールが自動的に6つに決めてくれています。
ここで大事な補足を。引き分けが出ても、勝敗の数は動きません。 ただし引き分けには2種類あって、扱いがちょっと違うんです。
千日手は指し直しになります。同じ「第N局」としてもう一度指されるので、勝敗の数には数えません。広瀬九段が王位を獲った第51期王位戦は「4勝2敗2千日手」で、指し直しを含めると全8局が指されましたが、勝敗としては4勝2敗です。
持将棋のほうは指し直しになりません。タイトル戦の持将棋はその1局で完結したものと見なされ、両者「0勝0敗1分」として記録されます。伊藤王座が藤井聡太棋王に敗れた第49期棋王戦がまさにそれで、第1局が持将棋。そのまま第2〜4局が指されて、公式の記録は「0勝3敗1持将棋」となりました。
つまり「3勝1敗1持将棋」のような記録は実際にありえます。それでも勝敗の数だけを見れば、必ず3勝0敗・3勝1敗・3勝2敗のどれかに収まる——だから選択肢は6つで足りるのですね。この予言テストも、勝敗の数で判定します。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
①3-0で伊藤匠王座の防衛/②3-1で伊藤匠王座の防衛
王座戦の記録上、いちばん出やすいスコアがここです。3-0は42回中18回、3-1は11回。合計すると29回、実に7割近くを占めます。ただしこの厚みは、羽生善治九段の19連覇時代が大きく押し上げたもの。伊藤王座自身は、これまでの番勝負で一度もストレート決着を経験していません。
③3-2で伊藤匠王座の防衛
伊藤王座の履歴といちばん素直にかみ合うのがここです。決着済みの直近4回の番勝負がすべて3勝2敗。しかも第10期・第11期叡王戦では、いずれも防衛側として最終局を制しています。過去42シリーズでの3-2防衛は9回。「土壇場で強い伊藤匠」を信じるなら、この選択肢になります。
④3-2で広瀬章人九段の奪取
広瀬九段の2度のタイトル獲得は、どちらも最終盤までもつれた末のものでした。王位戦は指し直しを含む8局、竜王戦はフルセット。長い勝負でこそ力を出してきた棋士です。過去の奪取12回のうち3-2は4回。去年の第73期も、まさにこのパターンで王座が動きました。
⑤3-1で広瀬章人九段の奪取/⑥3-0で広瀬章人九段の奪取
「さすがに一方的すぎる」と思われるかもしれません。でも記録は違うことを言っています。奪取された12回のうち、3-1が4回、3-0も4回。接戦での奪取と同じ回数だけ、大差での奪取が起きているのです。しかも新王座の初防衛戦は6勝6敗の五分。過去には、初防衛戦を0勝3敗で落とした王座が3人(塚田泰明さん・福崎文吾さん・斎藤慎太郎さん)もいます。
⑦その他(五番勝負の中止・打ち切りなど)
王座戦がタイトル戦になった第31期以降、番勝負が打ち切られた例はありません。ただ未来のことですから、「どの選択肢にも当てはまらない」という事態を防ぐための受け皿は必要です。これがあるおかげで、この予言テストは公平さを保てます。
まとめ
整理しますね。王座戦の五番勝負42回では防衛が30回・奪取が12回ですが、羽生善治さんの防衛22回を外すと防衛8回・奪取12回で逆転します。奪取された12回のスコアは3-0・3-1・3-2がちょうど4回ずつ、そして新王座の初防衛戦は6勝6敗の五分。数字の上では、この五番勝負は「動きにくい勝負」ではまったくありません。一方で伊藤匠王座は直近4回の番勝負をすべて3勝2敗で制しており、広瀬章人九段の2度のタイトル獲得もどちらも最終盤までもつれた——ふたりとも「長い勝負」で結果を出してきたのです。
あなたは、10月のどこかで王座の座がどう決まると思いますか? 守る23歳か、挑む39歳か。そしてスコアは、3-0か、3-1か、3-2か。どの選択肢を選んでも、9月2日から始まる盤上の日々が、あなただけの答え合わせになります。未来を予測して、明るい気持ちでその瞬間を待ちましょう!
判定方法
第74期王座戦五番勝負で先に3勝を挙げた棋士と、そのときの勝敗数で判定します。日本将棋連盟および主催・日本経済新聞社が発表する結果を正とします。千日手は指し直しとなるため勝敗の数には数えません(例:第51期王位戦の「4勝2敗2千日手」は勝敗数4勝2敗)。持将棋は指し直しにならず1局として成立しますが、両者0勝0敗1分の引き分けとして扱われ、勝敗数には加わりません(例:第49期棋王戦の「0勝3敗1持将棋」は勝敗数0勝3敗)。したがって勝敗数は3勝0敗・3勝1敗・3勝2敗のいずれかに必ず収束し、①〜⑥で全パターンを網羅します。公式記録が「3勝1敗1持将棋」のように引き分けを併記する形になった場合も、勝敗数の3勝1敗として判定します。五番勝負が中止・打ち切りとなり、どちらも3勝に到達しないまま終わった場合は⑦とします。日程が延期された場合も、決着がついた時点のスコアで①〜⑥として判定します。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございましたー!
※本記事の記述はすべて2026年8月14日時点で確認できた情報にもとづいています。過去42シリーズのスコア集計は、Wikipedia「王座戦 (将棋)」の歴代結果表の生データを取得し、千日手局を除いた勝敗のみを1シリーズずつ数え直したものです(第31期は三番勝負のため集計対象外)。「第1局を制した側がシリーズを制した30回」も、同じ42シリーズについて防衛者視点の勝敗列の1局目とシリーズ勝者が一致するかを1件ずつ判定して数えました。
※叡王戦の期と年の対応は番勝負の開催年で表記しています(例:第9期叡王戦は2023年度の棋戦で、五番勝負は2024年開催)。
※第74期王座戦の日程・対局場・立会は、日本将棋連盟の王座戦ページに掲載された第74期五番勝負日程表により確認しました。第67期王位戦のスコア(藤井聡太王位の2勝1敗)および両者の通算対戦成績(伊藤匠王座の5勝4敗)は、いずれも2026年8月14日時点の値です。
※本記事に登場する人名は、日本将棋連盟および主催紙が公表しているプロ棋士に限っています。
本文 6,168文字(実測)/推定読了時間 約12分(500文字/分で換算)
選択肢
【 3 つまで選択可能 / 2026.09.01 @ 23:59 〆切 】 【Q.02886】 9/2(水)に第1局が始まる、将棋「第74期王座戦」五番勝負。伊藤匠王座vs広瀬章人九段の対戦結果は?
- ①3-0で伊藤匠王座の防衛 (0%, 0 アンケート)
- ②3-1で伊藤匠王座の防衛 (0%, 0 アンケート)
- ③3-2で伊藤匠王座の防衛 (33%, 1 アンケート)
- ④3-2で広瀬章人九段の奪取 (33%, 1 アンケート)
- ⑤3-1で広瀬章人九段の奪取 (0%, 0 アンケート)
- ⑥3-0で広瀬章人九段の奪取 (0%, 0 アンケート)
- ⑦その他(五番勝負の中止・打ち切りなど) (33%, 1 アンケート)
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